ものがたりについて

本公演・あらすじ

大正13年、〝ただ何となく〟地元旭川の商業学校に入学したヨシオとタケシ(ともに15歳)は、アルバイト先の美術展の設営現場で、強烈な個性の2人の芸術家、小熊秀雄と高橋北修に出会う。

これがきっかけで、小熊らの友人、速田弘の経営するカフェー・ヤマニに出入りするようになった2人。ヤマニに集うさまざまな人たちに接し、自らの生きる目的について考え始めるものの、小熊らが結成した「旭川歌話会」の同人、齋藤史にヨシオが失恋するなど〝迷い〟の日々を過ごす。そしてそんな2人を冷ややかに見つめるコタンの少年トージ。彼もまた自分が何を目指すべきか、答えを見つけられずにいらだっていた。

まもなく時代は昭和に移り、ヨシオとタケシは、偶然、親の借金のかたに働かされていた店を逃亡した酌婦の少女、ハツヨと出会う。廃娼運動を行っていた旭川の社会活動家、佐野文子らの協力を得た2人は、アナキスト(無政府主義者)のグループ「黒色青年連盟」に属し、妹を救い出す機会をうかがっていたハツヨの兄、エイジとともにハツヨを匿うが、右翼団体「極粋会」によって連れ戻されてしまう。

これがきっかけで一触即発の状態となる「黒色青年連盟」と「極粋会」。佐野はこの対立を利用してハツヨを奪還する計画を立て、「極粋会」事務所にヨシオらを送り込む。招魂祭でにぎわう初夏の夜、2つの団体が旭川始まって以来という大乱闘を繰り広げる中、ヨシオらを待ち受けていたのは思いもしない事態だった。

舞台に登場する当時の名所「旭ビルディング」

主な登場人物

架空の人物

ヨシオ 登場時は商業学校1年生。小熊らとの出会いをきっかけに、文学の道を目指す気持ちを強めてゆく
タケシ ヨシオの同級生で親友。2歳の時に岡山県から一家で旭川に移住。お調子者で、何をやっても中途半端だが、情に厚い。
ハツヨ 借金のかたに飲食店で酌婦として働かされていたが、命からがら逃げ出す。小さいときは裕福だったが、雑貨商をしていた父親が破産し、辛酸をなめる。
エイジ ハツヨの1歳違いの兄。親の破産に伴い、学校を辞めて工員になった。社会の矛盾に憤り、アナキストグループのメンバーとなる。
トージ ヨシオらより一つ年下のアイヌの少年。父親の急死で、小学校卒業後、様々な仕事に就く。のちに木彫り熊の名人となる。

実在の人物

小熊秀雄 旭川時代の小熊は、新聞記者として地域の文化活動の中心を担った。舞台では、北修とともに、ヨシオ、タケシが新たな世界を開くきっかけを作る。
高橋北修 「大雪山の北修」として知られる旭川生まれの画家。長身痩躯で、人間味あふれる人柄。絵を前にすると異様な集中力を見せる。
速田 弘 文化人のたまり場だったカフェー・ヤマニの店主。チェロ奏者としても活躍し、旭川一のモダンボーイと呼ばれた。
齋藤 史 父の第七師団勤務に伴い、2度に渡り旭川で暮らす。2度目の旭川生活では、来旭した若山牧水の勧めで本格的に短歌を始め、のちに日本を代表する歌人となる。
佐野文子 島根県から旭川に移住した人物。夫の病死後、社会奉仕活動に情熱を傾ける。特に廃娼活動では、命がけで多くの女性を救った。
その他 今野大力(詩人)、鈴木政輝(詩人)、町井八郎(楽器店店主)、酒井廣治(歌人・旭川信金初代理事長)、ヴィクトル・スタルヒン、堀田(三浦)綾子など。
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